からだケア

【妊娠と疲労編】妊婦さん&産後ママと支える人ためのリカバル講座

「妊娠出産は病気ではない」、そんな言葉が独り歩きして、妊婦さんや産後間もないお母さんたちがしんどい思いをしてしまう――そんな風潮は徐々にかわりつつあり、行政が主導して産後ケアの整備も進んできていはいますが、サービスを受けられているのはまだまだ一部。やはり大切なのは、周囲の理解です。
妊娠を維持したり、産後は赤ちゃんのお世話のために。妊娠出産した女性には心身ともにさまざまな変化が起こり、そしてその多くが「疲労」と結びついているといっても過言ではありません。
産前産後にどう変化することで疲労を抱えがちなのか、またリカバリーのために心がけたい休養の取り方を、専門のスポーツ科学の視点からウィメンズヘルスの研究をされている野村由実さんにうかがいました。

まずは妊娠期の女性の体の変化を知ることから

妊娠・出産は女性の人生の大きな転機となるライフイベント新しい命を授かった喜びはとても大きなものですが、分娩に向けて、女性の体にさまざまな変化が起こり疲れやすくなります。しかし、家事や仕事などもこなさなければならないため、休養をしっかりとることが難しいことも。

まずは、妊娠初期(~15週)、妊娠中期(16~27週)、そして妊娠後期(28週~)のお母さんの体の変化を知りましょう。パートナーが妊娠中、あるいは妊娠を希望している男性も参考にしてください。

リカバリー意識を根づかせたい妊娠初期(~15週)

基礎体温をつけていれば、高温期が長く続くことで妊娠に気づいたという人もいるのではないでしょうか。そのため、熱っぽさを感じてぼんやりしたり、だるさを感じて体を動かすのがおっくうになったり。妊娠初期からすでに「疲れたな」と感じるような症状が現れます。また急激なホルモン変化が起こるため、吐き気などのつわりに悩まされるのも多くはこの時期です。

妊娠初期は新しい命が芽生えたことがわかりうれしさや喜びの反面、不安が多かったり、まだ周囲に伝えられないことで不調であっても理解を得られにくかったり。産前産後を元気で過ごすために、お母さん自身が自らにリカバリー意識を根付かせたいでもあります。

 

新しい命が芽生えたことを楽しみながらケアしたい妊娠中期(16~27週)

体の変化にもだいぶ慣れてくる妊娠中期。ひどかったつわりが落ち着いてきたり、外見的にもお腹がふっくらしてきて、周囲に赤ちゃんがいることがわかるようになってきます。
いわゆる「安定期」ですが、それは赤ちゃんにとっての話。循環血液量の増加により鉄の消費量が多くなることから貧血になりやすかったり、体の重心バランスが変わってくることで、腰などに負担がかかり始めます。筋肉や関節など体の疲労を溜めないよう心がけることが大切です。

腰痛や膝痛、むくみなど体の疲労回復を心がけたい妊娠後期(28週~)

いよいよ出産が近づいてくる妊娠後期になると、個人差はありますが、体重は8~15キロも増加。体の疲労に加え、肺や心臓が圧迫されることでちょっと動いただけでも息が上がって疲れてしまったり、胃腸が押しつぶされることで食欲不振や便秘にも。またいよいよ子宮への血液循環が増え、下半身の血行が悪くなることで足がパンパンにむくんでしまうこともあります。

これらの痛みや疲労を抱えたまま赤ちゃんのお世話に突入とならないためにも、適度な運動やストレッチなどで体のケアにつとめましょう。

野村由実
千葉工業大学 創造工学部 教育センター 助教
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科を卒業後、日本体育大学 体育学部 助教などを経て2022年4月より現職。スポーツ医学やヘルスプロモーションをはじめウィメンズヘルスの調査研究にも取り組み、産前産後の女性の支援も行っている。

 

この記事のリカバリ用語

  1. 疲労

  2. リカバリー・サイクル